ペットの去勢避妊手術は、
昨今の、公的機関による大量の動物薬殺を少しでも食い止めるために
必要なことであることは私も承知している。
望まない妊娠や望まれない子犬たちの行く末ほど哀れなものはなく
それは人間もペットも同じであると思われる。
もちろん、そのほかにも
生殖器系の疾病を防ぐこともできるので
ペットの死因を、少なくとも一つは減らしてやることができるわけだ。
まぁ、でもこれは人間の側の論理であり
動物からすれば全く別なんだろうなぁ、と
昨夜の我が家のルナを見ていてそう思った。
昨日は、朝9時に病院へ連れて行き
午後6時に迎えに行った。
お迎えのときはまだ朦朧とした感じで、ちょっとふらついていたが
自分で歩くこともできた。
先生から「もし吐いたら、お水もフードもやってはだめですよ」と言われた。
「吐くんですか?」ときくと
「麻酔をかけたときに吐いたので、この後も胃液を吐くかもしれません」と言われた。
痛み止めをもらって帰った。
帰宅してテラスにつないでやると
所在無げに、うろうろし始めて
そのうち、何度か吐いたので
水も食べ物も与えられないことになった。
ではどうしてこの痛み止めを飲ませるんだろう…と思って
先生に電話すると、
「今晩は少し痛がるけど、吐いたのなら仕方ないので
あとはそっとしてあげてください」と言われた。
見ると、痛みからか震えたり、悲しい顔をしてこっちを見上げたり
聞いたこともないような、か細い声で
弱々しく「く〜〜ん、く〜〜ん」と鳴きながらこっちを見る。
そのあとももう一度吐いて、こんどは動かなくなった。
自分のマットの上でじ〜〜っとしている。
きっと痛みで動けないか、吐き気で気分が悪いかなのだろうと思ったが
あまりにもかわいそうに思えて
リビングに入れてやって、一緒に寝た。
そのあとも、私を見ながら「く〜〜ん」と何度も鳴いた。
私は抱きしめて一緒に寝てやることしかできなかった。
ルナを見て思った。
この子は、何も知らずに
朝、病院に連れていかれて
突然、麻酔、手術されて
自分にいったい何が起きたんだろうと思っているだろうなぁ・・・と。
なんで、こんなに痛い目に合うのかなぁって思ってるだろうなぁ・・・と。
病院に着くまではあんなに元気いっぱいだったルナが
動けないほどの痛みと戦っている・・・
「痛いよ、ママ」とも言えずに
か細く泣くだけで、悲しそうな目をして私を見ている。
「ごめんね、ルナ。
痛いね、痛いね、でも我慢してね。
だんだん良くなるからね。」
そう言って、背中をさすったり前足を握ったり
そんなことしかできなかった。
本当に手術しなればいけなかっただろうか・・・
こんなに痛い目に合わせなければいけなかっただろうか・・・
ルナの姉妹のひめちゃんは、ひめ母さんが
「何年か経ったら、妊娠させたい」と言ってらした。
そういう飼い方もあったのに、と頭の隅っこで思った。
だけど、ルナの子供が引き取り手がなかったら
子供たちを全部うちで飼うことにも無理がある。
ナシカ母さんは、「将来の病気を防ぐため」と言ってらした。
それは、ルナももちろん同じだ。
うちも、結局は繁殖を考えていなくて
将来の病気予防のためなのだが・・・
私の腕の中に何度も潜り込むルナを抱きしめながら
そんなこんなを、夜じゅうあれこれ考えた。
朝になれば少しは痛みも和らぐはず・・・そう信じて。
朝になって、昨夜は水の一滴も飲もうとしなかったルナが
ごくごくと水を飲んだ。
なにかに混ぜて、痛み止めを飲ませようとするが
バナナ…失敗
わんこ用パン…失敗
お水に溶かす…失敗
鶏のささみ…失敗
昨日まる1日何も食べてないので
とにかく何か好きなものを食べさせようと
人間用のパンを少しやると、ぱくっと食べた。
これなら、と思って
このパンに薬を隠してやろうとするが
においをかいで失敗・・・
まぁとにかくもう少しこのパンを食べさせようと思って
薬なしのパンを、さっきの薬入りと同じお皿に入れて
そのままにしておいたら
ふと見ると、お皿がからっぽ!
あ〜〜、やった!
薬飲んだ!!
これで痛みがおさまってくれるだろうと思っていると
だんだん調子も良くなって
お昼前後からは、とても元気になった。
ルナ、ごめんね。
子供を産めないようにしちゃったけど
その分、ルナを大事にするからね。
私は心の中でそんなふうにルナに話しかけた。
手術の是非は私にはよくわからない。
だけど、我が家の選択はこれしかないのだ。
今日は午後からすっかり元気になったルナ
夕ご飯も、ちゃんと食べた。
明日の朝はまたお薬を飲ませる。
そうこうしながら、日にちがたって行く。
そうこうしながら、犬も人間も年だけは平等にとる。
昨夜のルナを忘れない。
悲しそうな目を、
涙ぐんでいたように見えたあの目を
私は忘れない。
我が家の選択はこれしかなかったことを
ルナを最後まで責任もって育てることで証明する。
ルナ、ずっと元気でいて。
一緒に楽しくやろうね。
写真は、今日の午後の爆睡中のルナ嬢デス